相手の話している言葉の一部が理解できるからと言って、さも全部理解しているかのような相槌を打ってはいけません。最初に「英語はわかりません」と断っておいても、相手はあなたの相槌を見て、あなたはわかっているという錯覚に陥ってしまいます。そうすると、相手は怒涛の勢いでしゃべりまくり、通訳がいても、止める隙さえなくなってしまうことがあります。前述しましたが、アメリカ人は、相手がどんな人種あろうと、誰もが英語を話すものだと思い込んでいるところがあります。ですので、英語の「ンーフン」を連発しようものなら、相手はあなたが英語を話せ、言っていることをすべて理解していると解釈してしまいます。表敬訪問ならいざしらず、大事な商談なら、誤解をされないためにもむやみに相槌は打ってはいけません。ところで通訳から見ると、一番の困ったさんが、この「ンーフン」を連発する、もしくはクビを縦に振りまくるビジネスパーソンです。通訳には、日本から来る初対面のビジネスパーソンの英語力はまったくわかりません。「私は英語が苦手ですから」と言われても、本当に苦手なのか、遠慮しているのか容易に判断がつかないですし、役職が上位だったりした場合には、突っ込んで確かめることもできません。よくあるパターンが、あまりにも相槌を打っている様子から、通訳が「おわかりになっているものをあまり重複して通訳するのは失礼かな」と思い、かなりハショって説明してしまうことです。これなど、後で通訳は文句を言われたりします。また、海外のビジネスパートナーと通訳の双方とも、困ったさんは英語ができるものと錯覚してしまうこともあります。このような場合、たいていはビジネスパートナーが20〜30分ほどもしゃべってから、いまの話を最初から全部訳せということになります。しかし、通訳は錯覚しているのですから、詳しいメモを残していなかったりします。そうなると大変です。まずまちがいなく、通訳は後でひどい目にあうでしょう。通訳者の名誉のためにもあえて言わせてもらうのですが、通訳を使っている人は相手がしゃべっている間はヒマな時間となりますが、通訳はつねにフル稼働しています。交渉を成功させるためにも、通訳する立場の人間のためにも、安易な相槌を打ってはいけないのです。